もしも、あなたがこの世に居なければ、この気持ちを、あたしは経験することはなかったのに。
こんなに汚くて、情けない自分を知らずに済んだのに。
普通に笑って、穏やかに過ごせたはずなのに。

 

あぁ、神様。
何故、あの人はこの世にいるのでしょう?
何故、あたしはこの世に生まれてきたのでしょう?

何故、あの人はあの女と笑いあっているのでしょう?


もしも、あたしがあの女を害したら、あなたは私を見てくれますか?
怒って、罵って、蔑んで、
あたしを一瞬でもいいから、あなたの心に住まわしてくれるなら、あたしは全てをうち捨てる。
築き上げた信頼も、友も、家族も、何もかも投げ捨てて、喜んで地獄に落ちるでしょう。


あぁ、神様。
もしもという言葉が、もしもあるのなら、もう少しだけ、罪をお見逃しください。
終わりの幕を引く、その時まで。
あたしが奈落に落ちる、その時まで。




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